シャングリ・ラ レビュー 「まさかの展開の連続」

 ※ネタバレ注意

 

21世紀中頃の近未来、世界中で地球温暖化が急激に進行していた。東京では街がジャングルに侵食され、住民たちは度重なるスコールに苦しんでいた。そんな状況で「アトラス計画」が発表され、住民たちは沸きかえるのだが…。

 

目次

 

放映時期

 

2009年春(2クール)

 

見始めたきっかけ

 

地球温暖化が極端に進んだ世界、池袋樹海、桃髪の美少女といった設定に惹かれ視聴開始。

 

推しキャラ

 

モモコ。いわゆるニューハーフ。中田譲治ボイスで連発される下ネタの数々は、どれも納得できるものばかり。とかく難解でシリアスになりがちな展開に、どぎつい色の花を添えてくれた。

 

レビュー&採点

 

・作画(キャラデザインも含む) 15点

・音楽(BGM、op、ed、挿入歌、se) 25点

・ストーリー(話数の配分等の構成、話の面白さ、脚本、展開) 30点

・人物(登場人物にどれくらい魅力があるか) 20点

・独自性(世界観や提示される概念など、何らかのオリジナリティがあるか) 30点

・メッセージ性(制作陣は作品を通して何を伝えたかったのか) 20点

 

作画

 

11点/15点

 

熱帯雨林に覆われた近未来の東京、そんな魅力的なロケーションを街の猥雑さも含め満足いくレベルで描いていた。若いキャラのデザインは非現実的だが、歳を重ねたキャラは皺がきっちり描かれ妙に現実的だった。少々独特な印象のキャラデザインだが、本作品の雰囲気にはピッタリだと思われる。一方、ベタ塗りが目立ち、作画にムラを感じさせた。

 

音楽

 

18点/25点

 

オープニング曲の「キミシニタモウコトナカレ」は躍動感が半端でなく、May'nの持ち味である高音と声量を存分に生かし切った名曲である。素早く移り変わる映像も相まって、オープニングの出来は随一。本編で使われた曲も良い曲は多かったが、サントラを買うレベルまでは近からぬ距離があった。明るい展開の時に流れるエンディング曲は良かったが、暗い展開で流れるエンディング曲は悲壮感が溢れすぎていて俺は好きになれなかった。

 

ストーリー

 

20点/30点

 

古事記、株式取引、天皇制、反政府組織、地球温暖化、驚愕の血縁関係…。ありとあらゆる要素を詰め込みまくっていた上、予想をはるかに超えた展開が続いたため、考察しがいはあった。しかしながら、設定が複雑すぎたためか物語が不必要に難解になってしまい、結果として理解に苦しむラストにつながってしまった面は否めない。

 

終盤で全く予期せぬ血縁関係が続々と明らかになったり、鳴瀬涼子を倒すためかつて敵対していた涼子の部下たちがクニ子に協力するシーンは胸が熱くなった。

 

人物

 

13点/20点

 

秋葉原の3人組の爺さんはじめ、愉快なキャラが揃っていた。にも関わらずこの点数なのは、登場人物に薄っぺらさを感じたからだ。どこが薄っぺらいかを説明するのは難しいが、己の都合を最優先にして行動する人物が多かったからだろうか。

 

独自性

 

27点/30点

  

地球温暖化に苦しむ近未来東京という設定はありがちながら、株式取引をモデルにした炭素税取引や公社と皇女と反政府組織の三つ巴の争いなどの要素が詰め込まれたため、独自性はあったと思われる。

 

メッセージ性

 

10点/20点

 

仲間や家族と協力して平和を取り戻す、というメッセージが込められていたとは思う。あまりにも複雑すぎる設定や時に常人の理解を超えたストーリー展開のせいで、伝えたかったであろうメッセージがぼやけてしまった印象。

 

総評

 

71点。なんだかんだ、面白い作品ではあった。ただ、見終わった後で時間を無駄にしてしまった感覚に襲われたのも事実である。設定や主人公のクニ子が魅力的だったためついつい観始めてしまったが、人にはお勧めしかねる作品。本作品を見るくらいなら、他にも見るべき作品はいくらでもあるのでそちらをご覧いただきたい。

 

本作品が無名である理由。

 

1、複雑でわかり難い設定が敬遠され、視聴者数が伸び悩んだ。

 

2、難解な設定や物語に耐えきれなくなり、脱落者続出。

 

3、見終わった数少ない視聴者の記憶に、意味不明なラストや徒労感が残る。

 

4、完走者から本作品の評判が発信されない。一方、不評はある程度発信された。

 

5、放映終了時点から本作品を見る者は限られてしまい、続々と増え続ける無数のアニメに埋もれてしまった。

 

以上の流れがあるかと思われる。本作品以外にも、同様の流れを辿って歴史の彼方に消え去った作品は沢山あるだろう。そう言った作品にも、有名作品には無い良さを持つ作品はあるはず。歴史に埋もれてしまった作品から隠れた逸品を発見する過程で、本作品のような微妙なハズレを引くこともある。なんともほろ苦い教訓である。

 

とはいえ、考察も含めて面白かった作品ではある。地球温暖化が極端に進行した近未来東京という設定も魅力的。熱帯と化した秋葉原や池袋の描写など、本作品独自の見どころも多い。暇を持て余している諸氏には比較的おすすめの作品である。