フルメタル・パニック! レビュー 「戦場のリアル」
※ネタバレ注意
世界最強の特殊部隊「ミスリル」に所属する相良宗介軍曹。彼は、千鳥かなめを護衛するため陣代高校に転校してきた。と思いきや、まさかの空回り&ドタバタギャグ。そしていつの間にか戦場へ?
目次
放映時期
2002年冬(2クール)
見始めたきっかけ
来期からフルメタルパニック4期がスタートすると知り、せっかくだから1期から見てみようと思った。
推しキャラ
ガウルン。途中まではなんて嫌な奴なんだと思った。しかし終盤、「数百億の船と死ぬのは嫌いじゃないよ。」的なセリフで一気に印象が変わった。カナメの「奴は9回ツーアウト満塁のピンチを楽しんでる。」という説明でさらに好きになった。トドメは相良軍曹と交戦中、「カシム。カシム。愛してるぜ。」と叫んだシーン。今までの憎しみが突然愛しさに変わったんだと思うと、無性にガウルンが愛おしくなった。
レビュー&採点
・作画(キャラデザインも含む) 15点
・音楽(BGM、op、ed、挿入歌、se) 25点
・ストーリー(話数の配分等の構成、話の面白さ、脚本、展開) 30点
・人物(登場人物にどれくらい魅力があるか) 20点
・独自性(世界観や提示される概念など、何らかのオリジナリティがあるか) 30点
・メッセージ性(制作陣は作品を通して何を伝えたかったのか) 20点
作画
10点/15点
目が大きめに描かれながらも、リアルさを重視したキャラデザインが良い。ASや潜水艦など、メカの描写も凝っている。それ以外は普通。
音楽
22点/25点
旧ハンターハンターでお馴染み、佐橋俊彦が担当している。7話あたりまではストーリー(シリアス部分)がつまらなかったこともあり、やたらと勇壮なBGMが悪目立ちしていた。妙にリアルで悲壮感あふれる展開になってきたあたりから、佐橋のBGMが頼もしく聞こえるようになった。彼の真価が発揮されるまで時間がかかった印象だが、やはり佐橋俊彦の音楽は素晴らしい。彼が担当する作品はサントラだけでもチェックしなくては、と思わせてくれた。
ストーリー
27点/30点
1〜3話あたりまでは、相良軍曹があまりにも大真面目に護衛するせいで「笑ってはいけないSP」になっていて最高だった。4〜7話のシリアスは、ありきたりな展開でつまらなかった。タクマが登場するあたりから、戦場の厳しさを教えられるような冷徹な展開になってきたため面白くなった。13話から戦場と平和な日常が地続きであると示唆するようなセリフが出始め、ストーリーに深みと一貫性を増す演出がなされた。
人物
16点/20点
あまりにも真面目すぎるが故にギャグキャラになってしまった相良軍曹、意外とガサツな千鳥、なぜか大佐の白髪美少女、様々な人種のミスリル上層部たち…。ありがちかもしれぬが、魅力的なキャラが揃っていた。敵キャラや嫌味たらしい味方も、端的に過去が語られる等して最終的に共感できるよう描かれていた。オープニングの最後で様々な人種のミスリル上層部たちが敬礼し、締めに千鳥が敬礼する演出も良い。
独自性
27点/30点
相良軍曹がいくら護衛のためとはいえ、ドーハの悲劇を報じたスポーツ新聞に穴を開けて千鳥を監視したり、走行中の電車からホームに飛び移ったり、真面目すぎるが故のギャグをこんなに沢山提供してくれたアニメは他にあるのだろうか。
ギャグパートと思いきや戦場とひと続きであると感じさせるような演出やセリフを配し、登場人物たちと同様の緊張感を味わえるようになっているのも新鮮だ。
メッセージ性
20点/20点
一見軽いノリのアニメかと思いきや、実際の戦場の残酷さや無情さ、無常がストレートに描かれている。全編を通じて、「平和な日常と苛烈な戦場は地続きである。油断せずその時に備えよ。」というメッセージが発せられている。
総評
87点。「笑ってはいけないSP」と呼ぶべきギャグパートは最高。容赦なく味方が死んでいったり、無情な結末を迎えたりと、王道を微妙に外しながら冷徹なリアル描写を追求したシリアスパートも強い印象を残した。白髪の美少女が大佐であり艦長なのはエンタメを重視した結果だろうが、そこ以外は非常にリアルな作りである。米軍との関係や組織内の上下関係及び成員の思惑、無慈悲な殺戮など、残酷なくらいリアルに描かれている。だからこそ、至高のギャグパートが一層面白くなるのである。
本作品の人気の秘密
1、ギャグパートが非常に笑える。
相良軍曹は大真面目なのに、いちいち笑わせてくれるのだ。各登場人物同士の絡みもいちいち笑える。笑いを催す作品はそれだけで人気になる。
2、とてもリアルで残酷な描写
大人たちの思惑が原因で暴走し破滅に至ったり、容赦なく味方が死んでいったり、今度は味方が金で買収されたり、戦場と日常が地続きだと示唆されたり、決して現実離れしたハッピーエンドにはせず、リアルさにこだわり残酷な描写も厭わなかった。どうせラノベノリの軽いアニメだろうと思っていた視聴者は、予想外に真摯な描写に魅了されいつの間にか取り込まれてしまった。
3、ギャグとシリアスの絶妙なバランス
人気になる作品は大抵、ギャグとシリアスのバランスが絶妙である。本作品もそうであり、ギャグとシリアスの落差も視聴者を虜にする要因だと推測される。