宇宙よりも遠い場所 レビュー 「感動と共感を阻む者の正体」

 ※ネタバレ注意

 

圧倒的なまでの作画音楽声優のクオリティ。なお細部に関しては…以下略。

 

目次

 

放映時期

 

2018年冬(1クール)

 

見始めたきっかけ

 

とあるブログを見て覇権候補と知り気になる。国立極地研究所が制作に協力しているあたり、相当真面目に作られていると感じ視聴開始。

 

推しキャラ

 

日向。見た目がいい。退部&退学に追い込まれても、バイトしながら受験勉強していたのは痺れた。

 

レビュー&採点

 

・作画(キャラデザインも含む) 15点

・音楽(BGM、op、ed、挿入歌、se) 25点

・ストーリー(話数の配分等の構成、話の面白さ、脚本、展開) 30点

・人物(登場人物にどれくらい魅力があるか) 20点

・独自性(世界観や提示される概念など、何らかのオリジナリティがあるか) 30点

・メッセージ性(制作陣は作品を通して何を伝えたかったのか) 20点

 

作画

 

14点/15点

 

マッドハウスの本気が炸裂した。南極の景色はもちろん、シンガポールのビル群の作画が異常なくらい美麗である。日向がバイトしてるコンビニに置いてあるペットボトルに至るまでこだわりが感じられる。どんなに細かい部分でも、スタッフの偏執を感じるくらい丁寧に描かれている。二次元らしくデフォルメしつつも、ある程度のリアリティを残したキャラデザインも良い。ただ、キャラの外枠を覆っている白い線には違和感を感じた。美麗な背景からキャラが浮いているように見えるため、物語への没入感を弱めてしまった感がある。

 

音楽

 

23点/25点

 

 

オープニング曲も良いが、エンディング曲が実に感動的である。作中の音楽もストーリーを盛り上げる名曲揃い。特筆すべきは、作中の感動的なシーンで流れてくる挿入歌である。最終話の野球シーンで流れてきた「One Step」にあまりにも感動したため、野球シーンだけを何度も再生したほどだ。音楽で感動を演出する手法はkey作品が有名だが、その流れをマッドハウスも踏襲しているのは謎の感動を覚えた。

 

ストーリー

 

18点/30点

 

 

女子高生が何かに挑戦する物語は、大衆の興味を引きやすいためか頻繁に制作される印象。一方、南極に挑戦するという本作品のテーマ自体は新鮮であり興味深かった。南極での観測活動の難しさを克明に描いてくるかと思ったが、女子高生4人組や観測隊員の人間関係や悩みがメインテーマになっていた。女子高生4人組の心情や葛藤は良く描けていたし、納得できる決着もしている。

 

ただ、シンガポールでの騒動や松岡隊員の恋愛は不要だったように思う。その分南極の厳しさの描写や報瀬が母の死を受け入れる過程の描写がカットされ、物語全体が悪い意味で弛緩してしまったからだ。

 

舞台が南極なので、同行が決まるまでの過程をもっとハードに、訓練ももっと過酷にした方がより感情移入しやすかった。報瀬の母の遺体回収があれば、報瀬たちの心情がより深く描けたはずだし、南極の厳しさも伝えられたと思う。

 

報瀬の縄跳びや、キマリとめぐっちゃんの関係など、伏線設置&回収はさすがである。

 

人物

 

8点/20点

 

女子高生4人組はもちろん、観測隊員たちもそれぞれの持ち味がきっちり描かれていた。各企業から苦労して資金を調達しやっとの思いで南極観測が実現したはずなのに、登場人物たちがふざけているように見えてしまったのは白けた。キャラの白枠共々、登場人物への共感を阻む要素となっていた。

 

登場人物は大衆からの共感を得やすい一般人だし、描かれる心情もリアルだったが今一つ共感できなかった。

 

独自性

 

21点/30点

  

脇役に至るまで実力派声優で固められ、作画へのこだわりは狂気さえ感じる。国立極地研究所が制作に協力している点も踏まえると、粗製乱造と言われる昨今において近年稀に見るレベルで真面目に制作されているのは確かである。

 

しかし実際にストーリーを振り返ってみると、女子高生たちがゆる〜く青春しているような印象を受けてしまう。南極挑戦以外は、よくある女子高生青春物語の域に留まる作品だった。

 

メッセージ性

 

16点/20点

 

一歩踏み出そう、というメッセージはひしひしと伝わってきた。友情のもろさ、強さ、尊さも制作陣が伝えたかったメッセージだろう。

 

総評

 

71点。作画、声優、音楽は最高レベルだった。制作陣は極めて真面目に作っていたと思う。ただ、南極観測隊員が昼間からビール飲んでたり、女子高生にうつつを抜かしていたり、あまりにもふざけすぎていたのはガッカリした。もっと真面目に残酷に、南極の厳しさを描いて欲しかった。国立極地研究所の協力を仰いだ成果はどこにあったのだろうか。

 

船に積める荷物に限りがあり、当然飲料水にも限りがある条件で、喉が乾くポテチや利尿作用が強烈なビールがたんまり積まれていたのは呆れた。南極の氷を水に変えるのは燃料不足で厳しいだろうし、水の備蓄は大丈夫だろうか。というように、細かいツッコミどころが満載だったのも残念だった。

 

最後の野球シーンは最高だった。

 

俺が最終回で感動できなかった理由。

 

最終回の野球シーンでは感動できた。挿入歌が感動必至の名曲だったし、報瀬が強烈なホームランを打ち、母と南極への未練を断ち切ったことが伝わってくる名シーンだったからだ。唐突に報瀬が髪を切るシーンも、母の別れを受け入れたことが伝わる良い場面だった。

 

ただ、それ以外ではどこか弛緩したムードが流れていたため、南極との別れやそれぞれの成長、友情という感動要素がぼやけてしまった。帰国後、キマリたちが自分たちは成長したんだという趣旨のセリフを述べたが、どれも卒業式でよく聞くお決まりのセリフのように聞こえた。airではセリフの意味が分からなくても感動したが、よりもいは感動できなかった。

 

なぜか。airでは感動的な名曲がかかっていたが、よりもいでは制作陣が感動させたい場面と流れている曲がミスマッチだったからだろう。かかっている音楽がどうも印象に薄かった、という方が正確か。なまじセリフの意味が分かってしまっているからこそ冷静さを保っていられ、感動できなかった面もある。カメラアングルがキャラメインでなかった点もキャラへの没入を阻み、感動を阻んだ要因の一つだろう。