伊藤潤二コレクション レビュー 「独特の死生観」

 世間の注目度は低いけど、実は結構名作だよ。

 

目次

 

放映時期

 

2018年冬(1クール)

 

見始めたきっかけ

 

伊藤潤二は読んだことないけど、いつか読みたいと思っていた。(俺は漫画読む習慣が皆無)d−アニメストアで無料で観れると知り、アニメの方を先に見てみた。

 

推しキャラ

 

双一。何といっても双一でしょう。跡部景吾もドン引きするくらいナルシストで、気に入らない者たちに珍妙な呪いをかけてターゲットや周囲の人々が困惑する様を見てニヤニヤするのが趣味という変態である。同級生を山中で冬眠させたり、嫌いな先生を口から釘を吐き出す布人形にしたりと呪いのセンスが最高。呪い以外にも各種悪戯を仕掛けるのだが、本格的に危害を加えるようなものではなく、愚かさと愛嬌を感じさせる。昭和の悪役を思わせながら、どこかで見た小学生のようでもあり、愛おしさと可愛さがこみ上げてくる。やりたくても(世間的に)できない行動を思う存分やってくれるので、爽快感すら感じてしまう。

 

レビュー&採点

 

・作画(キャラデザインも含む) 15点

・音楽(BGM、op、ed、挿入歌、se) 25点

・ストーリー(話数の配分等の構成、話の面白さ、脚本、展開) 30点

・人物(登場人物にどれくらい魅力があるか) 20点

・独自性(世界観や提示される概念など、何らかのオリジナリティがあるか) 30点

・メッセージ性(制作陣は作品を通して何を伝えたかったのか) 20点

 

作画

 

11点/15点

 

全体的に絵は古臭い。ただ、細部までよく描いてはいる。女性キャラは美人が多く、独特のデザインでありながら極めて写実的である。怖いシーンはおどろおどろしく描かれていて、マンガをそのままアニメにしたように見える。

 

音楽

 

22点/25点

 

前半は印象に残っていないが、後半からは名曲の宝庫なので是非聞いてみてほしい。特に、7話後半のアンビエント基調の曲が素晴らしい。

 

ストーリー

 

22点/30点

 

1話で、2つの独立した話が展開される。 ストーリーがほぼなく現象だけが提示される話もあるが、予想外の展開を見せる話も多かった。つまらない展開の話や興味を惹かれない話もあったが、考察のしがいはあった。結末やなぜそうなったかが曖昧な話も多く、脚本で魅せるというより意味不明な現象そのものを見せるタイプの作品である。

 

 

人物

 

14点/20点

 

正直、双一以外の人物の印象が薄い。双一には単なる悪ガキを超えたある種の信念すら感じたが、他に特筆すべき人物はいなかった。富江には引き込まれるものがあったが、芸術家の狂気を表現するための道具という印象が拭えなかった。

 

独自性

 

27点/30点

  

双一のキャラや言動はかなり強烈で独特だった。日本独自の死生観を、原作者のセンスで斬新な死生観に昇華されたと思しき話もあった。どこかで見たような雰囲気を漂わせながらも、視聴後に残る余韻や意味不明感はやはり本作品ならでは、である。

 

メッセージ性

 

18点/20点

 

違和感や意味不明感を残すのが狙いと思われる話は多かった。ただ、記憶の継承は大事である、死者を長い年月かけて供養する、といった現代人が忘れがちなメッセージは確かに込められている。

 

総評

 

81点。つまらない話が散見された。しかし、振り返ってみると考察しがいのある話も多く全体的なクオリティは高かったように思う。見て面白いというより、見終わって考察したり語り合ったりするのが楽しい作品である。印象に残る話も多く、俺の世界観を豊かにしてくれた感はある。

 

それでも原作の方が面白い(はず)

 

原作の雰囲気を忠実に再現しよう、という心意気は十分伝わってきた。(原作未読だが)しかしながら、原作を1ページ1ページ舐めるように読んだ方が百倍くらい面白いはずである。ストーリーを楽しむのではなく、絵をじっくり目に焼き付けて、作中で起こっている現象そのものを味わうのが「伊藤潤二コレクション」の醍醐味だからだ。