老人Z レビュー 「じいちゃんの大冒険」

 ※ネタバレ注意

 

 約80分と長い作品だけど、あっという間です。それぐらい面白い。

 

目次

 

放映時期

 

1991年夏公開

 

見始めたきっかけ

 

ネットでの高い評判を聞きつけて。

 

推しキャラ

 

ハッカーのお爺ちゃん:ただのエロジジイかと思いきや実は凄腕のハッカー。関西弁も巧みに使いこなし、話も面白い。こういうお爺ちゃんになりたい。

 

エロは人類を救うって本当なんだね。

  

レビュー&採点

 

・作画(キャラデザインも含む) 15点

・音楽(BGM、op、ed、挿入歌、se) 25点

・ストーリー(話数の配分等の構成、話の面白さ、脚本、展開) 30点

・人物(登場人物にどれくらい魅力があるか) 20点

・独自性(世界観や提示される概念など、何らかのオリジナリティがあるか) 30点

・メッセージ性(制作陣は作品を通して何を伝えたかったのか) 20点

  

作画     15点/15点

 

後世に名を残すスタッフたちが結集しているだけあって、作画クオリティは非常に高い。Z-001号機が集めてきたガラクタ、その猥雑さは後のSerial experiments lainを彷彿とさせる。キャラが驚くシーンがコテコテのギャグマンガ調で表現されており、いかにも90年代だなと感じさせる。キャラデザインも、あの当時の雰囲気を如実に表現していて大変懐かしい。

 

音楽     22点/25点  

 

やや演歌調の主題歌が良い。コミカルな音楽がストーリーを盛り上げていた。

 

ストーリー  30点/30点

 

介護用ロボットの体裁をとりながら実は軍事用ロボットであり、周囲のあらゆる物を取り込んで暴走する…。そんな危険なロボットに実験のため乗せられた一人の老人が、己の夢を叶えるべくロボットとともに旅をする。物騒な設定ではあるが、それを感じさせない抱腹絶倒の物語に仕上がっている。人物の行動原理や思考もわかりやすく、実にテンポよく話が展開されている。うっかりロボットに入り込んでしまった猫など、かなり考えて伏線が張られかつ回収されている。

 

人物          20点/20点

 

悪役やモブも含め、どのキャラもとても生き生きしている。制作年度がバブル期であるため、世相を反映しているのだろうか。ハッカーのお爺ちゃんを始め、前田や知枝など己の欲望に忠実に人物も多く、見ていてなんだか元気になる。軍事用ロボットが暴走している状況にもかかわらず人々はどこか呑気であり、平和ボケした当時の日本がもろに投影されている。

 

独自性         30点/30点

 

攻殻機動隊の世界より進んだ技術を描きながらも、中身は抱腹絶倒のコメディである。消防車やダンプカー、うどん屋の幟まで取り込んで暴走する介護用ロボットが出てくるのはこの作品くらいだろう。荒唐無稽でありながら大変爽やかな印象であり、独特の余韻も残る。

 

メッセージ性    20点/20点

 

「軍事用ロボットだって平和利用は可能なんだ。」「介護ロボット自体は悪じゃない、被介護者の意思がないがしろにされるのが悪なんだ。」抱腹絶倒のめちゃくちゃなストーリーに隠れて、実に熱いメッセージが込められている。そんな風に思った。

 

 

総評

 

98点。制作されて30年近く経つが、ここ最近見たアニメの中でダントツに面白かった。80分があっという間に感じられるテンポの良さは孤高の域に達している。

 

時代背景を映し出す一幕

 

 

寺田さんが記者に「放射能が漏れる心配があるのではないか。」と聞かれ、「ごく微量の放射能漏れでも、センサーが感知するため大丈夫です。」と返し、記者が安心する一幕がある。今の時代では考えられないが、原子力安全神話や役人が全面的に信頼されていた時代背景を如実に反映している。言い換えれば、平和ボケしていた日本を反映する一幕でもあった。

 

爆笑に隠された真実

 

・病室では、ハッカーのおじいちゃん始め老人が実に元気である。しかし、おじいちゃんばかりで、おばあちゃんが一人だけなのは不審である。一般的に女性の方が長生きなので、この時代においてもおばあちゃんの方が多くいそうなものだが。おばあちゃんは年を取っても入院する必要がないくらい元気だけど、おじいちゃんは年を取ったら入院必須なほど不健康になってしまうということか。昭和くらいまでの定年を迎えた男性は、やることがなくなったため急速に衰えていった割合が高いらしい。だから入院する羽目になったと考えるのが自然である。もしくは、おじいちゃんは偏屈さや厄介さゆえ疎まれるケースが多く、家族に入院させられてしまったか…。

 

・当時の看護学校では、今以上に男性が希少だった。本作の前田君は、晴子たちと仲がいい。だが、三人の後ろを前田君が歩くシーンはどこか女性と男性の序列というか距離感を感じさせる。この辺りのリアリティが、本作品に深みを与えているのは確かだろう。